お浄土は誰も見たことがない? 2022/6/13

住職の法話

 「経典学習会」が終わった後で「ここだけの話ですけど、お浄土の存在を疑ったことはないけど、誰も見て帰ってきた人はいないですよね。見た人は(死んだ人なので)帰ってこれませんから」と言われました。良い問いですね。

 歴史上の人物で、お浄土を直接目で見ることが出来た最初の人物は、勿論お釈迦様です。そして一般(在家)の方で最初に見た人は、インドにあったマダカ国のお妃さまと、その女官五百人がお釈迦様の神通力でご覧になられました。お浄土の姿を直接見ることが出来た者は、その存在を疑うことがありませんので、必ずお浄土に生まれる身の上になったそうです。

 お釈迦様の神通力で、お浄土の姿を見ることが出来たお妃さまは、お釈迦様亡き後の人達は、どのようにしたらお浄土を見ることが出来ますか?という質問に対してお釈迦様は、お浄土を見る方法を詳しく語ります。これが『観無量寿経』というお経です。この行法に従って、実際にお浄土をご覧になられた方は沢山いらっしゃって、例えば『浄土論』を著作された天親菩薩。日本人で有名な方でいえば、法然上人。最近の方では二千日回峰行を達成された、酒井雄哉大阿闍梨が常行三昧堂で阿弥陀如来をご覧になられたといいます。浄土真宗の勧学和上である浅田先生が、幻想を見たのではないか?という質問をされておられますが、そうではないという事が詳しく述べられておられる本(「愚者になりて往生す」自照社出版)がありますので、興味のある方は是非読んでみてください。ただ、この行を完成するのは非常に難しく厳しいもので、また誰もが出来るものではないので、実はお釈迦様は『観無量寿経』で、お浄土を見る行法をお説きになられた直後、この行は勧めずに、お浄土があると信じてお念仏を称える事を勧めます
                      「西法寺だより」115号より